ヴィンテージレコードの楽しみ
超能力の域。楽譜を熟知した指揮の緻密さは驚嘆すべきものがあった。

Lorin Maazel/ Vienna Philmarmonic – Tchaikovsky: Symphony No.4 – GB DECCA SXL6157

《ED2、オリジナル盤》
GB DECCA SXL6157
マゼール&VPO チャイコフスキー・ 交響曲4番
Producer: Erik Smith
Engineer: Gordon Parry
Recording location: Sofiensaal, Vienna, September 1963 – October 196
鬼才指揮者の若き日の名演、優秀録音
まだ若かったマゼールが、ウィーン・フィルを指揮してデッカにおこなったセッション録音。録音会場は、かつてデッカがウィーン・フィルとのセッション録音に多用したゾフィエンザールで、このホールでの収録時に顕著な生々しいサウンドが演奏の個性をいっそう引き立てています。
「ffss」のロゴ・マークでも知られたその鮮明な響きは細部にこだわり抜くマゼールの芸風との相性も良く、通常では意識しないような細部の音型をシャープに立ち上がらせたり自在で俊敏なドライヴ感を克明に伝えるなど、当時のマゼールならではの魅力をいっそう際立たせていたように思います。
ロマン派交響曲としてのスリルやダイナミズムを往年のウィーン・フィルの個性豊かな美しいサウンドで実現したユニークな内容。

早熟の天才として幼いころからヴァイオリン奏者として名を成し、ニューイヤー・コンサートではヴィリー・ボスコフスキー再来とばかりに弾き振り感動与えてくれました。彼の指揮のもとで演奏した、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団の楽団員は記憶力の抜群な指揮者だったと当時を語っていた。譜面をめくること無く、頭のなかでめくりながら指揮をしているようだったという。
ドラマティックな展開に富むこの曲を覇気あふれるタクトで、ぐいぐい引っ張るロリン・マゼールの力量が魅力。この曲のヘルベルト・フォン・カラヤンの演奏はすごい。しかし、そのカラヤンに畏怖を感じさせていたであろうマゼールの音楽もまたすごい。
そんな超才能は、早熟の天才所以もある。8歳で大学オケを指揮してデビュー、9歳でレオポルド・ストコフスキーの招きでロサンゼルス・フィルハーモニックを指揮、さらにアルトゥーロ・トスカニーニに認められNBC交響楽団を指揮、ニューヨーク・フィルハーモニックにもデビューした。その少年に対して練習中はわざと音を外して嫌がらせをする立派な大人たちに、マゼール少年はプロの指揮者としてその間違いを指摘し健全な人間関係を築いていったという。
このウィーン・フィルとの録音の前に、ドイツ・グラモフォンでベルリン・フィルハーモニー管弦楽団との録音もある。30歳の史上最年少でバイロイト音楽祭デビューを飾った時の録音で、わずか数年前までヴィルヘルム・フルトヴェングラーが指揮し、今は帝王カラヤンが君臨する天下のベルリン・フィルを相手にしている。その5年後、名匠カルーショーが(5番のプロデュースを最後に)身を引いた後のことだ。当時のレコード会社の協定では掟破り覚悟のギリギリといえる同一曲の録音をウィーン・フィルで敢行。英国DECCA社としてはカラヤンとの契約が継続できるか不安定要素だったのだろう。たとえ保険としてのマゼールの器用だったとして、チャイコフスキーの交響曲、協奏曲をまとまった形で今、私たちは楽しむことができているのは嬉しいことです。
チャイコフスキーは、録音が良いことは必須です。本盤は、クールかつクリアな雰囲気となっており、シベリウス同様チャイコフスキーにもピッタリ。朗々と鳴り渡る金管や明晰なティンパニなどは立派にロシアの雰囲気を醸し出している。決して明るすぎることのないシャープさは、けっして曲想から逸脱してはいません。英国DECCA録音の面目躍如といったところでしょうか。素晴らしい録音です。
ヴィンテージ・レコードのプロダクト、クレジットとノート
オーケストラ
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
指揮者
ロリン・マゼール
作曲家
ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー
曲目
交響曲4番
録音年
September 1963 – October 1964
録音場所
ウィーン、ゾフィエンザール
録音チーム
- Producer: Erik Smith
- Engineer: Gordon Parry
録音レーベル
DECCA
レコード番号
SXL6157
録音種別
STEREO
レーベル世代
WIDE BAND WITH GROOVE MADE IN ENGLAND ED2
製盤年
1965
Stamper
1W/3G。
レコード盤枚数
1枚組
レコード盤重量
150㌘
製盤国
GB(イギリス)盤
【ヴィンテージ鑑定のポイント】
Hi-Fi レコードの名盤が多い、イギリス・デッカのセンター・レーベルのデザインは年代別に4つのグループに分けることができる。それぞれを、English DECCA を記号化してオーディオファイルは ED1, ED2, ED3, ED4と呼んでいる。また、それら中でも、ED1 から ED3 までを「ラージ・ラベル」、ED4 を「スモール・ラベル」と大別している。ラージ・ラベルは、スモール・ラベルよりもセンターレーベルの大きさがひとまわり大きい。また、レーベル中にデザインされている銀色の帯(黒色で「 FULL FREQUENCY 」と書かれている)の幅が13ミリメートルあり、ED4 よりかなり広いため、「ワイド・バンド」とも呼ばれている。
WIDE BAND WITH GROOVE MADE IN ENGLAND ED2
《ワイドバンド ED2》レーベルデザインについては ED1 とほとんど同じですが、10時の位置が MADE IN ENGLAND 外側に深溝。ED2 が初版の LP は SXL の 6000 番代前半に見られます。多くの専門家の間で、このセカンド(ED2)の音質は、ファーストラベル(ED1)に似ているという意見が多いです。
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