ヴィンテージレコードの楽しみ
豊麗にして精妙無比。このカラヤンでウィーン・フィルを完全掌握した英デッカ社の黄金期を象徴する傑作。

カラヤンの指揮する曲は概して大胆さや迫力にプラスして、丁寧でかつ美しいということです。とりわけ、ゆっくりのテンポの美しい旋律は、カラヤンの最も得意とする部分だと思います。
本盤では、例えば、怒濤のような旋律の中で、ぱっと花が咲くように美しいメロディーが流れる。この点にかけては、カラヤンは見逃さず見事に再現している。言い換えればダイナミックレンジが広いとでもいえましょうか。
カラヤン&ウィーン・フィルの守備範囲とダイナミックレンジの広さを知らしめるのに役立っていると思います。《惑星》史上初録音として話題になった盤。魅力を列挙しますと、カラヤンと当時関係良好だったウィーン・フィルとの録音。カルーショーお気に入りだったリング収録場所、ウィーンのソフィエンザールでの録音セッション。ウィーン・フィルの奏でる美音はこの他の録音とは全く別次元の高みに達しています。豊麗にして精妙無比。
Herbert von Karajanhan/ Vienna Philmarmonic – HOLST: Planets – GB DECCA SXL2305

《英ワイドバンド、ED2盤》
GB DECCA SXL2305
カラヤン&ウィーンフィル ホルスト・惑星
P:ジョン・カルショウ、E:ゴードン・バリー、ジェイムズ・ブラウン。1961年9月5〜22日、ウィーン、ゾフィエンザールでのセッション録音。
幸福の魔法 最初の「惑星」初ステレオ録音
この作品がまだ今日のようにポピュラリティを獲得していなかった1960年代初頭に登場したこの録音によって、名作の真価が広く世に認められることになりました。
大宇宙への果てしない夢とロマンを湛えたホルストの《惑星》は、壮大なサウンド・スペクタクルとしてオーディオ的な醍醐味を満喫できる名曲です。

第二次世界大戦は日本軍の無条件降伏、ポツダム宣言で集結したが終わっていない戦いもあった。戦後、ヴィルヘルム・フルトヴェングラーの勢力下、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団で演奏することさえ制限されたヘルベルト・フォン・カラヤン。そこへ救いの手を差し出したのが英国EMIの名プロデューサー、ウォルター・レッグだった。カラヤンのレコーディング専用オーケストラ、フィルハーモニア管弦楽団でたくさんのレコードを発売。劇場での指揮は出来ずとも、レコードでカラヤンの名前は全世界に知られるようになる。
ただカラヤンの悪い虫が騒いだというのか、オーディオへの関心を深めることになった。そして彼はステレオ録音を希望したが、折り悪く英国EMIの経営陣はステレオ録音に懐疑的だった。そうこうしていると、フルトヴェングラーが急死。カラヤンはウィーン・フィルに復帰できた。しかし、ウィーン・フィルは英国DECCAと専属関係にあったので、カラヤン指揮ではレコードを作れない。カラヤンはEMIとの契約更新を曖昧に引き伸ばしていた。
そこに接近してきた英国DECCA社では、1959年にEMIと契約の切れたカラヤンと契約。DECCAが、このカラヤンでウィーン・フィルを完全掌握した誘惑が、グスターヴ・ホルストの交響組曲《惑星》をステレオ録音しようというものだった。斯くて、1965年までカルーショーが後世に伝えるに相応しいカラヤン&ウィーン・フィルの名盤をこの6年間で製作することになる。制作は英DECCAのジョン・カルーショー、エンジニアはジェームス・ブラウン&ゴードン・パリーの二頭立てという『ショルティの指輪』制作陣がそのまま担当するという力の入れよう。後世に語り継がれるオペラを、ウィーンのソフィエンザール(カルーショーがお気に入りだったリング収録場所)で着手。
その録音セッショッンの合い間にカルーショーは有名管弦楽曲の録音。何れも全体に覇気が漲っていて、弦も管も美しく技巧的にも完成度は高い名盤を量産。後のEMIやDGGのベルリン・フィル盤にはない魅力タップリのまったく聴いていてダレるような箇所がない。
ヴィンテージ・レコードのプロダクト、クレジットとノート


WIDE BAND WITH GROOVE MADE IN ENGLAND ED2
《ワイドバンド ED2》レーベルデザインについては ED1 とほとんど同じですが、10時の位置が MADE IN ENGLAND 外側に深溝。ED2 が初版の LP は SXL の 6000 番代前半に見られます。多くの専門家の間で、このセカンド(ED2)の音質は、ファーストラベル(ED1)に似ているという意見が多いです。
オーケストラ
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
指揮者
ヘルベルト・フォン・カラヤン
作曲家
グスターヴ・ホルスト
曲目
交響組曲「惑星」
録音年
1961年9月5〜22日
録音場所
ウィーン、ゾフィエンザール
録音チーム
P:ジョン・カルショウ、E:ゴードン・バリー、ジェイムズ・ブラウン
録音レーベル
DECCA
レコード番号
SXL2305
録音種別
STEREO
レーベル世代
WIDE BAND WITH GROOVE MADE IN ENGLAND ED2
製盤年
1962
Stamper
6W/8W。
レコード盤枚数
1枚組
レコード盤重量
150㌘
製盤国
GB(イギリス)盤
【ヴィンテージ鑑定のポイント】
Hi-Fi レコードの名盤が多い、イギリス・デッカのセンター・レーベルのデザインは年代別に4つのグループに分けることができる。それぞれを、English DECCA を記号化してオーディオファイルは ED1, ED2, ED3, ED4と呼んでいる。また、それら中でも、ED1 から ED3 までを「ラージ・ラベル」、ED4 を「スモール・ラベル」と大別している。ラージ・ラベルは、スモール・ラベルよりもセンターレーベルの大きさがひとまわり大きい。また、レーベル中にデザインされている銀色の帯(黒色で「 FULL FREQUENCY 」と書かれている)の幅が13ミリメートルあり、ED4 よりかなり広いため、「ワイド・バンド」とも呼ばれている。
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