ヴィンテージレコードの楽しみ
レスピーギの華麗なオーケストレーションを忠実に再現した、アンセルメの模範的演奏。
アンセルメならではのテンポ設定のうまさが光る明晰さ、
明るいカラフルな響きのなかにもくっきりとした陰影 ―
説得力のある演奏。
火事により失われしまう
ヴィクトリアホールの美しい響きを
見事にとらえた優秀録音。
GB DECCA SPA227
(指揮)エルネスト・アンセルメ
(管弦楽)スイス・ロマンド管弦楽団
(曲目)レスピーギ・ローマの松/ローマの噴水
「アッピア街道の松」に古代ローマの楽器をイメージして指定されているバンダのブッチーナ(Buccina)はサクソルン族を使用しています。

レスピーギの代表作、ローマの松とローマの噴水は、カラフルでダイナミックなオーケストレーションで有名だが、本盤は、アンセルメ&スイス・ロマンド管弦楽団の名コンビの演奏で、デッカの鮮明な録音も手伝い、レスピーギのオーケストレーションがくっきりと浮かんでくる。演奏のほうも説得力がある。
オーケストラは音程が不正確だったり、縦の線がずれていたりといった乱れもありますが、アンセルメならではのテンポ設定のうまさが光る明晰さ、明るいカラフルな響きのなかにも陰影をくっきりとつけていて、フレンチスタイルの鄙びたバソンの響きも古典的な雰囲気にうまく合っていました。
なお「アッピア街道の松」に古代ローマの楽器をイメージして指定されているバンダのブッチーナ(Buccina)はサクソルン族を使用しています。水牛の角のような形状の金管楽器でバルブやピストンもなく自然倍音を奏でるしか無い、この楽器は1930年代にドイツのアレキサンダー社によって復元されナチスドイツの親衛隊が吹いている写真も存在しますが、レスピーギがこの楽器の音を実際に聞いたのかという事実はわかりません。現実のスコアには自然倍音以外の音も記譜がされており、レスピーギ自身は、ソプラノとテナーについてはフリューゲルホルン、バスについてはユーフォニウム若しくはバリトンを想定していたようです。
1963年1月スイス、ジュネーブのヴィクトリア・ホールでの録音。火事により失われてしまったヴィクトリアホールの響きを見事に捕らえた録音も良く、オルガンの重低音にうまく乗ったオーケストラの響きが空間に豊麗に拡散していく様子がはっきりとわかります。
伝説のホールで幾多の名録音が生み出された
― ジュネーヴのヴィクトリア・ホールは優れた音響を誇るうえに、レコーディング・スタジオとしても最適でした。指揮台の頭上に吊るしたデッカツリーといわれる3本のマイクロフォンのみで収録されたにもかかわらず、圧倒的な色彩感と空間性が再現されています。
ヴィンテージレコードのプロダクト、クレジットとノート
レコードのカバー、レーベル写真

カバー裏表紙

レコードレーベル
オーケストラ
スイス・ロマンド管弦楽団
指揮者
エルネスト・アンセルメ
作曲家
オットリーノ・レスピーギ
曲目
- ローマの松
- ローマの泉
- ロッシニアーナから「純潔のタランテラ」
録音年月日
1963年1月
録音場所
ジュネーブ、ヴィクトリア・ホール
録音レーベル
DECCA
レコード番号
SPA227
録音種別
STEREO
レーベル世代
BLUE WITH SILVER LETTERING
レコード盤枚数
1枚
レコード盤重量
120㌘
Stamper
1W/2W
製盤国
GB(イギリス)盤
レコードのディテール
SPAシリーズ
《SPAシリーズ》英DECCA社の廉価版シリーズは、1960年前後に第1の廉価盤シリーズ「Ace of Clubs/Ace of Diamond」を発売します。その後、1970年代に入ると第2の廉価盤シリーズ「Eclipse」を発売します。
そして、第3の廉価盤シリーズとして「The World of Great Classics」として「SPAシリーズ」を発売します。本盤は、その第3の「SPAシリーズ」なのですが、クラシック入門編といった趣で演奏者の全然違う録音を組み合わせた編集も多く、コレクション的には価値が低いものの、音質的にもSXLシリーズより僅かスッキリした感はありますが、DECCA社らしい高音質(Hi-Fi)となっています。
同じソースでも、SXLオリジナルの1/5~1/10程度の費用で入手できるので、コストパフォーマンスの高い盤としてオススメできます。
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