Erotical Music Review and My Ecstatic Experience.


堪らなくグラマラス◉カラヤン指揮ベルリン・フィル◯モーツァルト・交響曲第40番、41番《ジュピター》

Soap.nmm.jp

評価 :5/5。

評価 :5/5。

評価 :5/5。

厚みと艶に富んだ弦楽器に加え、ゴールウェイ、コッホ、ライスターといったベルリン・フィルが誇る木管陣の名人技も大きな聴きどころになっている。

《仏カラー切手盤》FR VSM C069-02147カラヤン モーツァルト・交響曲40&41番

カラヤン、ベルリン・フィルの録音は星の数くらい沢山あるが、ベルリン・フィルの実力を最高に引き出しているという点では当盤も最右翼でしょう。極めてスタイリッシュかつパワフルで録音も素晴らしく、オーディオ的観点からも胸のすく音の洪水。

大編成のオーケストラを流麗に鳴らしていくスタイルを貫かれている。まさに、カラヤンの美学がすみずみまで結晶化した演奏であり、そのゴージャスな味わいは比類のない高みに達している。

1970年9月に録音。本録音はカラヤンの何時もの重厚感が(たま)らなく良いし、豪華絢爛(ごうかけんらん)なベルリン・フィル伝統のアンサンブルも健在で、他に得られない圧倒的なものです。

仏製見開きジャケ
フランス製三方見開きジャケットとも言いますが、アメリカの見開きジャケット(Wジャケ、ゲートフォールド)とは違い、フランスの LP によくある豪華ジャケットです。プレスの限らずジャケットにも英、米、仏でレコード造りに対する国民性を感じます。 

ヴィンテージのプロダクト、クレジットとノート

オーケストラ

ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

指揮者

ヘルベルト・フォン・カラヤン

作曲家

ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト

曲目

交響曲40番、41番「ジュピター」

録音年月

1970年9月

録音レーベル

VSM(EMI)

レコード番号

2C069-02.147

録音種別

STEREO

レーベル世代

COLOR STAMP DOG

レコード盤枚数

1枚

レコード盤重量

120㌘

製盤年

1971

製盤国

FR(フランス)盤

本作は、ベルリン・フィルとヘルベルト・フォン・カラヤンのコラボレーションが生み出した、不朽不滅のモーツァルト後期交響曲集。カラヤン美学の徹底した演奏による、優美に磨かれた華麗なモーツァルト。スケールの大きな中にも美しさがちりばめられた、心地の良い響きに魅了される作品。

1970年代はスーパースターがいた時代だった。カラヤン、マイルス・デイビス、マイケル・ジャクソン、カリスマ的なリーダーが各音楽ジャンルに君臨出来た。また、この時期に、演奏技法も、録音のノウハウも確立し、素晴らしい名演が刻印された。とりわけ、カラヤンとベルリン・フィルのコンビに関していえば、カラヤン自身が、「いま、私とベルリン・フィルとは最高の状態にある」と豪語したように、絶頂期を迎えていた。オーケストラはシュヴァルヴェを筆頭にカッボーネ、ボルビッキー、ツェベリッツが率いる弦楽器群、ゴールウェイ、コッホ、ライスター、ビースク、ザイフェルトという、綺羅星の如きスター達が、それぞれの技を競い合い、フォーグラーがリズムを刻む。オーケストラ芸術の極致が示された幸福な時代だった。

このモーツァルトも、その絶頂期の記録。カラヤンの全盛期は、ザルツブルクの復活祭音楽祭を創設した1967年から椎間板の手術をする1975年までだが、その間のレコードは、輝きが違う。円熟期のアナログ録音がデジタル録音という最新技術が登場。そのコンビをもってしても、満を辞して、再度チャレンジしたグラモフォン盤も、これを凌駕することは出来なかった。

モダン楽器の大編成オーケストラによるモーツァルト演奏の理想

カール・リヒターがレコーディング中に滞在していたミュンヘンのホテルで心筋梗塞で急死したのが1981年であったが、カラヤンがデジタル録音をしたのが1980年のモーツァルトからだった。アルヒーフがリヒターで録音を進めていたカンタータ全曲録音は頓挫し、大型のコンサートホールでの演奏を前提とした19世紀から20世紀に主流だった大編成のオーケストラ芸術のスタイルで頂点を極めたのは、モーツァルトでは、カラヤンだった。

モーツァルト演奏の規範ともいうべきセルのクリーヴランドとの録音ももちろん素晴らしいが、フレージングも、ダイナミックスも、カラヤンが上だ。クーベリックのバイエルン放送響との演奏は、壮麗な美演だが、活力が違う。比肩しうる、世界最高レベルの響きを奏でられる奏者達を抱えていたオーケストラと、そのバランスを最上に整えられる指揮者の独壇場となるのは、自明なことなのかも知れない。

この当時のカラヤン&ベルリン・フィルの弦の美しさ、レガートの優美さ、静と動のコントラストが見事なこと。古楽器演奏でも追求されていた要素が、図らずも既にこの演奏には軽快なメリハリと躍動感が加わる。それが、現代楽器の艶やかさ、華やかさでもって奏でられた、ここでしか聴けない見事なモーツァルト像を具現している。屈託のない流麗な美しさの中に、モーツァルトの神髄に迫る深さを感じる。個性の突出した演奏に触れると、他の演奏の特質も、理解できるようになるから不思議である。

「オリジナル楽器でのバッハ演奏が脚光を浴びるようになった理由のひとつが1981年2月15日のカール・リヒターの死であることは間違いない」。ネット上の書き込みとして知られている言葉が信託のように思えてくる。