クレンペラーの磨き抜かれた目が、ひたすらブラームスを凝視しているのではと思えてならない。
ドイツ・レクイエムと誰が名付けたか知りませんが、クレンペラーの磨き抜かれた目が、ひたすらブラームスを凝視しているのではと思えてならなくて、レクイエムとクレンペラーのイメージが重なり合って仕方ありません。
欧米の音楽家が演奏を解釈する時に宗教の有り様は大きいと思われる。ユダヤ人であることでブルーノ・ワルターは命からがら渡米している。オットー・クレンペラーはユダヤ教から改宗している。そのことを問われて「いやいや、私たちには子供が二人います。アメリカで俳優をしているブルーノと、ここにいるロッテです」と言葉を濁しているので、カトリック教を選んだ本位はわからない。しかし、祖国イスラエルへの想いは強かったことも伝わっている。
この「ドイツ・レクイエム」のタイトルには第二次世界大戦中には意味合いが変わったのだろうが、ブラームスが母親の死を悼んで作曲したラテン語の鎮魂歌の歌詞を借りた私的な思慕の想いで生まれた名曲。葬儀のための音楽ではなく、死、喪失感といったことよりも再生を予兆させる、どこか慰めに満ちた音楽です。
「死は勝利にのまれた。死よ、おまえの勝利はどこにあるのか。死よ、おまえのとげはどこにあるのか。」と戦争や紛争の虚しさを説いている。

《英マジックノーツ・セミサークル盤》GB COLUMBIA SAX2430-1 クレンペラー ブラームス「ドイツ・レクイエム」
同曲屈指の名盤。クレンペラーとしては意外に遅いテンポではないにもかかわらず、生み出される音楽は極めて重厚。一音一音がしっかりと描かれた壮大かつ繊細な名演です。
1961年1月2日、3月21、23、25日、4月26日、ロンドン、キングズウェイ・ホール録音、名演、名盤。
ヴィンテージ・レコードのプロダクト、クレジットとノート
演奏者
- エリーザベト・シュヴァルツコップ
- ディートリッヒ・フィッシャー=ディースカウ
- ラルフ・ダウンズ
- フィルハーモニア合唱
オーケストラ
フィルハーモニア管弦楽団
指揮者
オットー・クレンペラー
作曲家
ヨハネス・ブラームス
曲名
ドイツ・レクイエム
録音年月日
1961年1月2日、3月21、23、25日、4月26日
録音場所
ロンドン、キングズウェイ・ホール
録音レーベル
COLUMBIA
レコード番号
SAX2430-1
製盤国
GB(イギリス)盤
レーベル世代
MAGIC NOTES SEMI-CIRCLE
レコード盤枚数
2枚組
レコード盤重量
160/140㌘
Stamper
7 20/4
製盤年
1962
ヴィンテージ・レコードのカバー裏とレーベル写真
レコード盤2枚組セット、ボックスセットではなくスリーヴ入り。1枚目は片面盤。


セミ・サークルのセカンド、音質的にはBlue and Silver盤に迫るクオリティです。
宗教的合唱曲を超越した、不朽の合唱曲。
英EMIの偉大なレコード・プロデューサー、ウォルター・レッグの信条は、アーティストを評価するときに基準となるようなレコードを作ること、彼の時代の最上の演奏(録音)を数多く後世に残すことであったという。クレンペラーは、それに良く応えた。本盤も、そのような基準盤の一枚で、レッグの意図する処がハッキリ聴き取れる快演だ。
クレンペラーの解釈は揺るぎのないゆっくりしたテンポでスケールが大きい。ゆったりとしたテンポをとったのは、透徹した目でスコアを読み、一点一画をおろそかにしないようにとも思いたくなる。この気迫の籠った快演は聴き手に感動を与えずにはおきません。また何度聴いても飽きません。フィルハーモニアはまさにクレンペラーの為にレッグが作り出した楽器だと言う事、しみじみと感じました。
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