イタリアの青い空、地中海の碧い色。
陽気さ、明るい、そういう音色、
そして一抹の陰り … 哀愁。
懐かしさと郷愁も感じる、
そんなヴァイオリンの音色に惚れた。
ヴァイオリンを肉声に近いくらい上手く操る名手で、まさに歌っている感じの演奏。1960年には来日、そのイタリア人らしいベルカント風な演奏が大変うけました。
フリッツ・クライスラーの小品を弾くカンポーリは、クライスラー本人の自作自演に匹敵するような魅力的な演奏を展開しています。イタリア生まれでイギリスで活躍したヴァイオリニスト、カンポーリの演奏は丁寧で歌い回しが自然で美しいことに加えて、テンポがとても良いので、聴いていて非常に心地良く感じられます。「クライスラーへのオマージュ」と題された、同タイプのレコードの中で最も有名で素晴らしいクライスラー名曲集はウィーンの名ヴァイオリニストであったフリッツ・クライスラーが作曲した曲10曲、パデレフスキ、ヴィニアフスキ、タルティーニの作品のクライスラーによる編曲が4曲、グラナドス作曲ベッカー編曲の曲が1曲収められ、「愛の悲しみ」「愛の喜び」「美しきロスマリン」「ウィーン奇想曲」「ベートーヴェンの主題によるロンディーノ」などの有名どころもほぼ網羅されています。センスの良い編曲とセンスの良い演奏で、クライスラーに負けない弾き崩しで魅力的な歌いまわしで小気味良く、大いに楽しめる演奏だ。
類まれな技巧を駆使して豊かな情感が表現されるが、その情感にはあくまで上品で繊細な響きがある。「愛の悲しみ」の弾き始めもクライスラー流の、ゆったりとした速度で歌われるが、その甘さもくどすぎることはない。また、「カルティエによる狩り」のようなリズミカルで技巧的な曲でも、その優雅なテンポの崩し方にはイタリア人らしいベルカント風と言える、カンポーリらしい個性がある。
その凄さが、これみよがしになっていないのが心憎い。歌うようなヴァイオリンの音色という形容は、これこそ肉声の歌声を聴いているようなカンポーリの録音にこそ言える至福の一枚。

《英ブラック金文字フラット10インチ盤》GB DECCA LW5218 カンポーリ HOMAGE TO KREISLER No.2
1956年リリース。
■ブラック・ラベル金文字、10インチ盤、ffrr、モノラル録音。
そしてまた、楽譜に書かれた音符から読み取った共感に忠実に、楽器が放つ音に色彩や音量の変化を綿密に施していくカンポーリの音楽性は、トルソーの少女像が甘美な官能的なものに変化していく様な艶めかしさも感じられて脱帽もの。類まれな技巧を駆使して豊かな情感が表現されるが、その情感にはあくまで上品で繊細な響きの持ち主、アルフレツド・カンポーリ。名前からして純粋なイタリア人と思えるが、活躍の場は女王陛下の国英国。バッハもモーツァルトもベートーヴェンもイタリアのやり方を見習い、その手法で自分の音楽を書きましたが、カンポーリは祖国イタリアを、異国の地、英国で DECCA の力を借り、国際スタンダードにした立役者と云ったところか。カンポーリのヴァイオリンは官能的なまでに甘美でありながら、ぴんと張りつめるような緊張感を保って伸びやかに歌っている。
超絶技巧満載の本盤においても、軽々と歌うように弾き切っており圧巻。録音も文句なしに優秀です。イタリア人という彼の中のラテン的な明るさとストラディヴァリスの豊穣な音色が相まって、ゆっくりとした時間の流れに身を委ねることが出来ます。
フリッツ・クライスラーを讃えて〜彼の80回目の誕生日に(クライスラー名曲集) No.2 収録曲
A1 クライスラー:ウィーン奇想曲, Op. 2
A2 パデレフスキ:メヌエット op.14-1 In G
A3 ヴィエニャフスキ:奇想曲変ホ長調 op.18-4
B1 グラナドス:スペイン舞曲集より『アンダルーサ』
B2 タルティーニ:コレルリの主題による変奏曲
B3 クライスラー:ジプシー女


第二次世界大戦勃発直前の1941年頃に潜水艦ソナー開発の一翼を担い、その際に、潜水艦の音を聞き分ける目的として開発され、当時としては画期的な高音質録音方式であった。1945年には高域周波数特性を 12KHz まで伸ばした ffrr( Full Frequency Range Recording 、全周波数帯域録音)仕様の SP 盤を発売し、1950年6月には、ffrr 仕様の初の LP 盤を発売する。特に LP 時代には、この仕様の LP レコードの音質の素晴らしさは他の LP と比べて群を抜く程素晴らしく、当時のハイファイ・マニアやレコード・マニアに大いに喜ばれ、「英デッカ=ロンドンの ffrr レコードは音がいい」と定着させた。LP 第1回発売には、J.S. バッハ作曲「ブランデンブルク協奏曲第4&6番」(LXT-2501、12インチ盤)、同作曲「管弦楽組曲第3番」(LX-3001、10インチ盤)があった。演奏はいずれも、カール・ミュンヒンガー指揮シュトゥットガルト室内管弦楽団によるものである。
ヴィンテージ・レコードのプロダクト、クレジットとノート
演奏者
- アルフレッド・カンポーリ
- エリック・グリットン
作曲家
フリッツ・クライスラー
録音レーベル
DECCA
レコード番号
IW5218
録音種別
MONO
製盤国
GB(イギリス)盤
レーベル世代
BLACK WITH GOLD LETTERING
レコード盤タイプ
FLAT 10inch盤
レコード盤重量
130㌘
Stamper
2B/1B
製盤年
56.1
コメントを投稿するにはログインしてください。