スタンダードな解釈
名手シェリングがステレオ初期にRCAに録音した若き日の名演。スペイン情緒はそんなにないにしても艶やかな音で楽しませてくれる。
エドゥアール・ラロの『スペイン交響曲」を奏でるヘンリク・シェリングの音色は、とてもみずみずしく、のびのびしていて極めて美しい。美音の持ち主は往々にして自らの音の美しさに浸りきった演奏をしがちであるが、シェリングの演奏は調和が取れていて純粋・明瞭かつ客観的であり、耽美的な要素はない。この録音から聞き取ることができるのは、シェリングの技巧の完璧さと音のニュアンスの幅広さ、そして音楽の美しさである。
シェリングを退屈なヴァイオリニストという意見が一部にありますが、いえいえそういうことはありません。ここで聴かせるシェリングは充分に情熱的で情緒にも何の不足もありません。そのヴァイオリンの音は艶やかに歌い上げますが一切不足にならないところが流石です。
シェリングの演奏が厳しいとか精神性が高いと評されることがあるのは、音の美しさに浸りきった演奏をしないことに由来するのだと思う。和音の処理が見事なことである。随所に出てくる和音を、まるでオルガンで演奏しているかのように演奏することは生易しいことではないはずだ。また、シェリング特有の上から下に弾く和音によってリズムが躍動するのも好きだ。次に、音のニュアンスが幅広い点も気に入っている。シェリングの演奏上歴史に名を残す独 DGG に入れたヨハン・ゼバスチャン・バッハの無伴奏ヴァイオリン・ソナタとパルティータ全曲聴けば、全て納得頂けると思います。本盤は、そのバッハをラロに移し変えたような快演。
録音、演奏共に極めて優秀と断言できます。

優秀録音、名盤。


演奏家
ヘンリク・シェリング
オーケストラ
シカゴ交響楽団
指揮者
ワルター・ヘンデル
作曲家
エドゥアール・ラロ
曲目
スペイン交響曲
レーベル
RCA
レコード番号
KV119
録音種別
MONO
製盤国
IT(イタリア)盤
レーベル世代
VICTROLA DARKMAGENTA WITH SILBER LETTERING
レコード重量
150㌘
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