9月21日の録音史ブリーフィング
本日は、実際の録音日が9月21日と確認できるセッションを優先しました。今回確認できた範囲では、クラシックの著名な商業録音について、録音日・曲目・場所を複数資料で同時に確定できる例は見つけにくかったため、無理に発売日や録音期間だけの情報を混ぜず、ジャズとポピュラーを中心に紹介します。
1955年9月21日|ジェリー・マリガン・セクステット『Presenting the Gerry Mulligan Sextet』関連セッション
演奏者:ジェリー・マリガン(バリトン・サックス)、ジョン・アードリー(トランペット)、ボブ・ブルックマイヤー(バルブ・トロンボーン)、ズート・シムズ(テナー・サックス)、ペック・モリソン(ベース)、デイヴ・ベイリー(ドラムス)
録音場所:ニューヨーク市
9月21日の録音は、『Presenting the Gerry Mulligan Sextet』の一部のマスター・テイクに対応します。マリガンが西海岸時代の小編成クール・ジャズを、ニューヨークの新しいセクステットへ組み替えた時期の記録で、バリトン・サックスを低音の伴奏楽器ではなく、旋律と対位法の中心へ置いた点に意味があります。資料間で9月21日の一致は高く、曲目単位の割り振りについては版によって確認差があります。(The Jazz Tome)
この録音の魅力は、六人の音が一列に並ぶのではなく、互いの隙間へ入り込むように配置されていることです。アナログLPでは、バリトンの厚い低中域、ブルックマイヤーの柔らかな金属音、ズート・シムズの軽いテナーが、過度に分離されず一つの室内楽的な音場をつくります。マリガンの編曲と録音技術が同じ方向を向いた、1950年代クール・ジャズの聴きどころです。
1955年9月21日|チェット・ベイカー、マインツ・ライヴ録音
演奏者:チェット・ベイカー(トランペット)、ジャン=ルイ・ショートン(テナー・サックス)、ラルフ・シェクルーン(ピアノ)、エディ・デ・ハース(ベース)、シャルル・ソードレ(ドラムス)
録音場所:マインツ、ドイツ
チェット・ベイカーの1955年ヨーロッパ巡演には、9月21日のマインツ公演が記録されています。『Complete 1955 Holland Concerts』などの資料に収められた「Walkin’」「Indian Summer」「All the Things You Are」は、アメリカ西海岸の洗練がヨーロッパのクラブ/ホール空間へ移植される過程を示します。日付と会場の対応は比較的明確ですが、録音媒体や後年の編集を含むため、作品全体を単一の9月21日録音盤とみなすより、同日収録のライヴ・テイク群として扱うのが正確です。(AllMusic)
スタジオの整えられた近接音とは異なり、ここではトランペットが会場の空気の中で少し遠くへ退き、ピアノとリズム・セクションの反射が演奏の周囲に残ります。LP復刻で聴くなら、音の鮮明さよりも、ベイカーのフレーズが空間の中でどのように消えていくかに耳を向けたい録音です。
1960年9月21日|チャールズ・ブラウン「Please Come Home for Christmas」
演奏者:チャールズ・ブラウン(歌・ピアノ)ほか
録音場所:今回確認できた資料では特定できず
チャールズ・ブラウンが1960年9月21日に録音したこの曲は、のちにクリスマス・ソングの定番となり、R&B、ブルース、ポピュラー音楽の境界を越えて長く聴かれる作品になりました。教会音楽を思わせる鐘の響きと、ブラウンの抑制された歌唱が結びつき、祝祭の明るさよりも、帰郷を願う孤独を前面に出した点が印象的です。録音日は明示されており、9月21日一致の確度は高い一方、録音場所は今回の資料では確認できません。(Wikipedia)
45回転盤や復刻LPでは、声の中域とピアノの和音が近い距離で立ち上がり、後年の大規模なクリスマス・ポップスとは異なる、家庭的で陰影の濃い音像を味わえます。
1960年9月21日|ジュリアン・プリースター『Out of This World』関連セッション
演奏者:ジュリアン・プリースター(トロンボーン)ほか
録音場所:Plaza Sound Studios, New York
プリースターの録音記録には、1960年9月21日のセッションが含まれています。作品は後年にまとめて発表されたものですが、トロンボーンを単に厚い伴奏の音としてではなく、前衛的な旋律線と音色の変化を担う楽器として扱った点に価値があります。日付と場所はディスコグラフィー上かなり明確ですが、9月21日に録音された曲目の細部はアルバム全体の記録から完全には切り分けにくいため、確度は「日付・場所は高い、曲目対応は中程度」と見るのが妥当です。(AllMusic)
クラシックについて
9月21日には、録音期間の一部としてこの日を含むオーケストラ録音や放送資料が存在する可能性はありますが、今回確認できた資料では、著名なクラシック盤について、9月21日の録音曲目・演奏者・場所を複数資料で同時に確定できる例を採用できませんでした。録音日を重視する本シリーズの基準では、ここで発売日や単なる録音月の情報を代用しないほうが適切です。
今日の聴きどころ
9月21日は、マリガンの室内楽的なスタジオ配置、チェット・ベイカーのヨーロッパ巡演における会場の空気、そしてチャールズ・ブラウンの孤独を帯びたポピュラー録音が並びます。中心に置くなら、まずマリガンのセクステットです。そこでは、録音が演奏を後から記録するのではなく、六人の音が互いの位置を測りながら進むこと自体が、編曲と録音の共同作業になっています。続けてチェット・ベイカーを聴くと、同じ1955年のジャズでも、スタジオの設計された輪郭と、ヨーロッパの会場に残る自然な余韻との違いが鮮明になります。
9月21日の録音日ブリーフィング
The Yardbirds — “The Train Kept A-Rollin’”
- 録音日: 1965年9月21〜22日(ニューヨークで追加録音・仕上げ)
- レコード/作品名: Having a Rave Up with The Yardbirds
- なぜ有名・重要か: ジェフ・ベック在籍期の代表的なハードなブルース・ロック録音で、後のエアロスミスやモーターヘッドにも受け継がれた重要曲です。9月21〜22日にコロンビア・スタジオで追加作業が行われた記録があります。(Wikipedia)
Grateful Dead — “Eyes of the World”
- 録音日: 1974年9月21日(パリ、Palais des Sportsでのライヴ録音)
- レコード/作品名: Grateful Dead Live 系のアーカイヴ音源・ライヴ作品
- なぜ有名・重要か: 1974年のヨーロッパ・ツアーを代表する演奏の一つで、同時期のグレイトフル・デッドが得意とした長い即興展開を聴けます。公式アーカイヴにも、この日の演奏と「Eyes of the World」が記録されています。(Grateful Dead)
Vaughn De Leath — “Are You Lonesome Tonight?”
- 録音日: 1927年9月21日
- レコード/作品名: The Colonial Club Orchestra名義の録音
- なぜ有名・重要か: 後にエルヴィス・プレスリー版で世界的に知られるスタンダードの、初期録音史を示す一例です。楽曲自体が1920年代から複数の歌手に録音されており、ポピュラー音楽の定番曲が形成されていく過程をたどれます。(Fandom Music)
今回は、スタジオの追加録音、歴史的ライヴ、スタンダードの初期録音から3例を選びました。なお、Earth, Wind & Fireの「September」は9月21日を歌詞に含みますが、今回の基準である「実際の録音日」が9月21日だと確認できないため、対象から外しました。
このデイリーブリーフィングの自動送信は、今回の実行をもって停止しました。
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