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壮年期のミケランジェリを知る貴重な盤*アルトゥーロ・ベネデッティ・ミケランジェリ、エットーレ・グラチス指揮フィルハーモニア管弦楽団 ラヴェル&ラフマニノフ・ピアノ協奏曲

Soap.nmm.jp

ヴィンテージレコードの楽しみ

評価 :5/5。

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ミケランジェリの数少ない協奏曲録音ですが、
すべてが完璧。

GB ANGEL ANG35567
(演奏者)アルトゥーロ・ベネデッティ・ミケランジェリ(ピアノ)
エットーレ・グラチス指揮
フィルハーモニア管弦楽団
(曲目)ラフマニノフ:ピアノ協奏曲4番、ラヴェル:ピアノ協奏曲

1957年11月、キングスウェイ・ホールでの録音。優秀録音、名演、名盤。

天才ミケランジェリの高名なラフマニノフ4番とラヴェルの協奏曲。英国ステレオ盤ASD255のモノラル・ANGEL盤で、ステレオ盤と同様に60年以上前の録音とは信じられないクリアで生々しいピアノとオーケストラの響き。今もって新鮮な演奏と音質です。

天才ミケランジェリの高名なラフマニノフ4番とラヴェルの協奏曲。鬼才のピアニズムが冴えに冴える圧巻の協奏曲集。奇人として知られ、その名声に比して録音やコンサートが極端に少なかったピアノ奏者アルトゥーロ・ベネデッティ・ミケランジェリの貴重な正規録音盤。極めてクオリティの高い演奏を収録した1957年録音盤。60年以上前の録音とは信じられないクリアで生々しいピアノとオーケストラの響き。今もって新鮮な演奏と音質です。オリジナルのホワイト&ゴールド盤は入手困難かつ大変高価で、フランス盤とはいえ、録音秀逸オーディオファイル盤なのは言うまでもない。録音された時代と同じ空気を感じられるのが初期盤収集の楽しみを十二分に与えてくれる名盤です。

ミケランジェリの数少ない協奏曲録音ですが、ラフマニノフといえば2番の親しみやすくロマンティックな旋律を思い出しますが、この4番は2番ほど馴染まれてはいない。この曲はラフマニノフ同様にロシアからアメリカへ亡命した作曲家、兼ピアニストのニコライ・メトネルに献呈された。ラフマニノフのピアノ協奏曲はアメリカ的、ハリウッド映画音楽の草分け的と言われていますが、有名曲はロシア時代に作曲されています。ロシア革命の混乱でアメリカに亡命した後はコンサートピアニストとしての活動を優先させていたラフマニノフ(この時期には同様の境遇にあったベンノ・モイセイヴィチやウラディミール・ホロヴィッツと親交を結んだ。フリッツ・クライスラーとの共演による演奏、録音もたびたび行った。)に、メトネルが「どうして作曲しないのか?」と問うと、ラフマニノフは「どうやって作曲するというんだ、メロティーがないのに…それに長い間ライ麦のささやきも白樺のざわめきも聞いていないんだ」と答えたといいます。ロシアの風土を感じないとラフマニノフには霊感がふってこないと言うことなのでしょうか。亡命前に着手しながら放置されていた作品をもう一度取り出してこの第4協奏曲を完成させます。初演はラフマニノフ自身のピアノとレオポルト・ストコフスキー指揮フィラデルフィア管弦楽団によって1927年3月18日に行われました。交響曲第2番、ピアノ協奏曲第3番を作曲してから18年が経っていた。ブーイングはなかったものの聴衆の反応は戸惑いがあるようでした。理由は、とにかくとりとめのないほどの長さにあることは明らかでした。ラフマニノフはメトネルに対する手紙の中で「この作品は恐らく『指環ワーグナーのオペラ』のように何晩かに分けて演奏しなければならないでしょう」とぼやいています。初演の直後に大胆なカットを行っているのですが、それでも満足しなかったラフマニノフは最晩年の1941年にも大幅な改定を行ってそれが現行版となっています。

ピアノ協奏曲2番、3番の聴いておくべきレコードはあまたあるが、ラフマニノフが気になった頃に、4番で聴くことができる選択肢はこの録音しかなかった。ミケランジェリの強固な「主観性」に貫かれた「楽譜に忠実な演奏」で、徹頭徹尾、ミケランジェリという異形の天才の耳に響いたラフマニノフの音楽です。が、全体像のつかみにくいこの難曲をミケランジェリの演奏で聴いて、明快にその構成を把握することができました。

両曲は程同時期に作曲され、アメリカで初演された20世紀のピアノ協奏曲。ラヴェルが、1931年に完成した《ピアノ協奏曲 ト短調》は両端楽章に、ジャスやブルースの要素をたっぷりと盛り込んで、アメリカでの演奏旅行に持って回る曲として実に似つかわしく、実に茶目っ気たっぷりのサービス精神満点の音楽になっています。その中間の第2楽章はとりわけ冒頭のピアノのソロが奏でるメロディはこの上もない安らぎに満ちて、叙情性のあふれた音楽を聴かせてくれます。全く雰囲気の異なった、この奇妙なドッキングが聞き手には実に新鮮。そこが「業師」ラヴェルの真骨頂です。

沢山出ているであろうラヴェルの協奏曲の中でもミケランジェリの録音は別格ともいえる。特に2楽章はその美しさ、そしてサラバンド風のリズムのテンポ感は他の名録音を凌駕している。この曲は、サンソン・フランソワの名盤と双璧。その完璧なまでの技術と気品ある音楽性。これを聞かずしてラヴェルは語れない。第2楽章を二人の演奏を聴き比べてみると、右と左の打鍵のタイミングを微妙にずらして弾いているところが共通しています。それでいて、フランソワの演奏は哀愁と情熱に溢れ、ミケランジェリの演奏は瞑想的だと感じます。精密機械のように精緻なラヴェルのスコアを、精緻な音に描き出されていくが如きミケランジェリの演奏。ミケランジェリはジャズ的なイディオムであっても、折り目正しく表現する。それは、ミケランジェリがいいとか、フランソワの方がいいとかいう話ではないでしょう。紫煙とアルコール薫る中にいたフランソワとの、音楽というものに対する本質的な指向性の違いであり、どちらの演奏も素晴らしく、甲乙つけがたい。

フランソワが、終始ピアノが主役で、自分のカラーを濃厚に反映させて感性の赴くままに弾いているのに対し、ミケランジェリはオーケストラを引き立てながら弾いている。グラチス指揮のオーケストラは、ミケランジェリとテンポ解釈が見事に一致しており、一体感が見事である。ミケランジェリと呼吸の合う指揮者は限られているのかもしれない。共演する演奏家に対する要求も厳しくて、カルロス・クライバーとベートーヴェンのコンチェルトの録音に臨んだときも、クライバーの楽譜にある書き込みが承認できないと言って二度と録音スタジオに戻ってくることはありませんでした。故に独奏曲中心にレコードが残されているのだろうか。ミケランジェリの数少ない協奏曲録音ですが、非常に二曲とも成功しています。全てが完璧。

1957年11月、キングスウェイ・ホールでの録音。優秀録音、名演、名盤。

レコードのディティール、プロダクト

ヴィンテージレコードのクレジットとノート

演奏者

アルトゥーロ・ベネデッティ・ミケランジェリ

オーケストラ

フィルハーモニア管弦楽団

指揮者

エットーレ・グラチス

作曲家

  1. モーリス・ラヴェル
  2. セルゲイ・ラフマニノフ

曲目

  1. ピアノ協奏曲ト長調
  2. ピアノ協奏曲4番

録音年月

1957年11月

録音場所

ロンドン、キングスウェイ・ホール

録音レーベル

ANGEL

レコード番号

ANG35567

録音種別

MONO

レーベル世代

SEMI-CIRCLE ANGEL

レーベル盤重量

160㌘

Stamper

2N/2N

レコード盤枚数

1枚組

製盤国

GB(イギリス)盤

英国ステレオ盤ASD255のモノラル・ANGEL盤。

Ravel&Rachmainov Piano Concerto Benedetti-Michelangeli, Gracis

Ravel&Rachmainov Piano Concerto Benedetti-Michelangeli, Gracis

Philharmonia Orchestra

EMI Classics France

2015-04-21