ヴィンテージレコードの楽しみ
体当たりの激しい演奏!
怖いもの知らずの溌剌とした指さばき、弓さばき。
ぐいぐいと盛り上げていく語り口の巧さは
他を寄せ付けないほどの説得力
英デッカ社の求める録音って
その時の等身大の演奏家の姿を
まるごと留めることなんだ!
少女の佇まいを未だ残した初々しい
逃げ場が無いほど体当り的で
痛いほどの緊張感も伝わってきます。
傑
烈
秀
麗
チョン・キョンファは素晴らしいヴァイオリニストであり、素敵な音楽家、そして忠実な友です。 ― アンドレ・プレヴィン

― チョン・キョンファ(鄭 京和)は韓国・ソウル出身の女性ヴァイオリニスト。12歳で渡米し、ジュリアード音楽院に学ぶ。1967年、19歳でエドガー・レヴェントリット国際コンクールに優勝。以降、国際的な舞台へ飛び出して活躍。英〈デッカ・レコード〉と録音契約を結び、年に100回以上の演奏会を行なうトップ・ヴァイオリニストへと成長。だが、2005年に指の怪我により長期療養を余儀なくされるも、2011年12月に復帰。2013年6月には15年ぶりの来日リサイタル公演を開催、2015年にも来日公演を行なう。2016年に『バッハ:無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ』をリリース。
DE DECCA 6.42920AG
(演奏)チョン・キョンファ
(指揮)アンドレ・プレヴィン ルドルフ・ケンペ
(管弦楽)ロンドン交響楽団 ロイヤルフィルハーモニー管弦楽団
(曲目)チャイコフスキー ヴァイオリン協奏曲/ブルッフ ヴァイオリン協奏曲
デッカのジェームス・ロックが録音エンジニア、プロデューサーはイシュトヴァーン・ケルテス録音で名高いレイ・ミンシャルだと言う事と録音場所がこれまた地下鉄音で名高いキングズウェイホールの所為か、録音はこれまた抜群。本盤の製作人からデッカの力の入れようが窺えます。DMM再発と言えども本盤でのヴァイオリンの冴えは素晴らしく、弓竿で完璧に鳴らし切っている箇所が何箇所か聴き取れます。

オーケストラ音楽はヘルベルト・フォン・カラヤンのベルリン・フィルハーモニー管弦楽団を、ピアノと言えば、マルタ・アルゲリッチの演奏を第一に聴いていた頃、ヴァイオリンと言えば、チョン・キョンファの全盛時代だった。カミーユ・サン=サーンスの「序奏とロンド・カプリチオーソ」は、フランスものならシャルル・デュトワだ、とされていた、そのオーケストラをバックにしてて、伸びやかに熱く、輝く。上り下りするだけの音階も正確で、綺麗な音であるだけでも、弦の力強さに打ちのめされる。特に、夢見心地の世界に誘ってくれるエルネスト・ショーソンの「詩曲」は、お薦め。サン=サーンスとはうってかわって、神秘的で、浮遊感に遊ばされる。息の長いフレージングが、素直な透るソノリティで演奏されているだけなのに、心豊かな思いをさせてくれるのは、オーケストラが、とっても柔らかく、暖かい空気感を醸し出しているサポートあってだろう。一挺のヴァイオリンから発されているような印象が残るくらいに、間合いがとても美しい。わずか15分程度の小品ではあるが、上等な仄暗さがあり、世紀末の爛熟した退廃的世界観と、儚い夢が綴られている。キョンファの卓越した技術と繊細な音色、女性ならではとも感じる感情表現など、彼女がいかに特別な存在であったかがわかります。東洋人のヴァイオリニストをスターにする英デッカ社の経営陣に敬意を表します。20枚近くあるチョン・キョンファのアナログ盤はどれも人気が高いが、中でも英盤は入手難。
ヴァイオリン界の女王として、現在も第一線で活躍をしている名手チョン・キョンファ。彼女の録音歴の中でもマックス・ブルッフの録音はアンドレ・プレヴィンと録音したピョートル・イリイチ・チャイコフスキーとヤン・シベリウスの協奏曲の次くらいの最初期の録音ですが、録音そのものに雰囲気があって、たっぷりとしたヴァイオリンを聞かせる。早熟の天才ヴァイオリニストとして、永くデッカのスターであったチョンはのちにバルトーク・ベラやセルゲイ・プロコフィエフ、それにヨハネス・ブラームスのソナタで聞かせてくれた厳しい表情の音楽とは違って、ヴァイオリンを朗々と響かせながら、ときとしては耽溺に過ぎるのではないかと思われる主観的な音楽を聞かせてくれます。懐かしのチャイコフスキーやシベリウスと同じ雰囲気です。ルドルフ・ケンペ/RPOの伴奏は、決してヴァイオリンを打ち消すようなことはなく、チョンに合わせて、たっぷりとした深みのある響きでサポートします。一方でオーケストラを鳴らすべきところでは堂々たる音楽を聞かせてくれるので、ヴァイオリンだけでなくオーケストラを聞く楽しみが堪能できます。
チャイコフスキーは現代世界最高のヴァイオリニストのひとりチョン・キョンファが1970年に録音した、記念すべきデビュー・アルバム。高度のテクニックと迸る情熱を見事に昇華させた比類のない音楽を作り上げてます。極めてヴォルテージの高い演奏で、プレヴィンの重厚にして華麗なサポートも聴き応えあります。怖いもの知らずの溌剌とした指さばき、弓さばき。ぐいぐいと盛り上げていく語り口の巧さは他の録音を寄せ付けないほどの説得力ではないでしょうか。デビュー・アルバムには誰でも最も本質がでていると思います。彼女の良い面だけが出て、音楽も気持ちよく弾んでいます。フレージングで気負いすぎている部分も感じられますが、伸びやかな美しい音色と豊かな音量で懐の深い演奏を聴かせています。デビュー・アルバムには常にどうこういう言葉がない。不思議とアイドルのレコードでも同様で、それはみんながアーティストを独り立ちさせようと頑張っているからかもしれない。東洋人のロンドン・デビューは、非常にセンセーショナルなものだった。アジア出身の国際的なクラシック演奏家というと珍しくないが、当時としては画期的だった。11年後に同曲を再録音しますが、それと比べると正に体当たりの激しい演奏という感じでした。
チョン・キョンファの、かすれる寸前の震えるようなピアニッシモから、ボウイングノイズまでリアルなフォルティッシモに至る幅広いダイナミズムと音色のグラデーションが優秀に録音されている。少女の佇まいを未だ残した初々しい逃げ場が無いほど体当り的で痛いほどの緊張感も伝わるようであり、一瞬の安らぎやゆとりが聴こえてきた時の例えようのなさ。デッカが求めている録音って、その時の等身大の演奏家の姿をまるごと留めることなんだなと思わせる。録音の聴きどころはそれこそ全編に渡って現れるが、特にチャイコフスキーの第1楽章再現部で主題を吹くフルートが、オーケストラの中から、ふっと浮かびあがる瞬間の正確な定位と立体感、音場の透明感、メロウでスウィートな音色、ホールトーンとの絶妙な溶け合いは、聴き手に麻薬のような陶酔感をもたらすに違いない。これを可能にしたウィルキンソン録音が有するとてつもないポテンシャルに改めて驚かざるを得ない。音楽的にもオーディオファイルとしても究極の1枚としてのゆるぎない位置を確立している優秀録音、名演。
1970年6月(チャイコフスキー)1972年5月(ブルッフ)ロンドン、キングズウェイホールでのクリストファー・レイバーン&ケネス・ウィルキンソン(チャイコフスキー)、レイ・ミンシャル&ジェームス・ロック(ブルッフ)による優秀録音、名演。
レコードのディティール、プロダクト
ヴィンテージレコードのクレジットとノート
演奏者
チョン・キョンファ
オーケストラ
- ロンドン交響楽団
- ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団
指揮者
- アンドレ・プレヴィン
- ルドルフ・ケンペ
作曲家
- ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー
- マックス・ブルッフ
曲目
- ヴァイオリン協奏曲
- ヴァイオリン協奏曲
録音年月日
- 1970年6月
- 1972年5月
録音場所
ロンドン、キングズウェイホール
録音チーム
- クリストファー・レイバーン&ケネス・ウィルキンソン
- レイ・ミンシャル&ジェームス・ロック
録音レーベル
DECCA
レコード番号
6.42920AG
録音種別
STEREO
レーベル世代
独デッカ・テルデック製DMMマスター
レコード盤枚数
1枚
Stamper
独テルデック・デッカ・スタンパー使用盤
製盤国
DE(ドイツ)盤
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