ヴィンテージレコードの楽しみ
〝個性〟が主張している ― 微妙に異質なモーツァルト
Clara Haskil, Ferenc Fricsay – Mozart – Concerto for Piano and Orchestra No.19, 27 – JP HELIODOR SMH-1060

JP 1957年日本グラモフォン社製, STEREO 1枚組 160㌘重量盤。
JP HELIODOR SMH-1060
クララ・ハスキル
フェレンツ・フリッチャイ
ベルリン・フィル、バイエルン国立管弦楽団
モーツァルト・ピアノ協奏曲19番「第2戴冠式」、27番
録音:1955年9月(19番)、1957年5月(27番)。
傑
烈
秀
麗
病と対峙しながら奏でられたモーツァルト演奏。
限界に追い込まれたときの人間の本当の友情、やさしさを具現化したような稀有な名演。
ほとんど完璧に近い音楽。
ハスキルを我々は今一度聴き直すべきです。
ルーマニア生まれで、病と闘いながらも演奏活動を続けた孤高のピアニスト、クララ・ハスキルを我々は今一度聴き直すべきです。音楽ファンに忘れがたい感動を与えた彼女の、詩情に満ちた気品あふれる比類ない、モーツァルトだと断言出来ます。
クララ・ハスキルは芸術・文化の中心パリでピアノを学びました。若くて美しい天才的なピアニストが華々しく活躍する様を想像しますが、実は闘病生活を虐げられていたということです。病気との戦いは彼女の人生を大きく支配するものとなりました。病気に加えて第二次世界大戦はユダヤ人であるハスキルに過酷な運命をもたらしました。同じルーマニア出身のディヌ・リパッティとは深い友情に結ばれていたようです。しかしそのリパッティの天才は若くして白血病に奪われてしまいました。というような彼女の生き様から、逃れられない運命に直面したときの人間の強さと孤独感を聞き取ることが出来ます。
そして一方で限界に追い込まれたときの人間の本当の友情、やさしさを感ずることも出来ます。本盤のモーツァルトは限界に追い込まれたときの人間の本当の友情、やさしさを具現化したような稀有な名演だと言い得ます。
ハスキルのピアノは玄米のようだ。
村上春樹が、その著書で「ほとんど完璧に近い音楽」として、セロニアス・モンクの音楽と並べてあげている「人生で3つ」ある幸福。
クララ・ハスキルがフェレンツ・フリッチャイの伴奏指揮で演奏したモーツァルトのピアノ協奏曲27番協奏曲の第2楽章は、神々しい雰囲気に満ちている。こういう演奏は、死ぬ間際にベッドの中で聴きたい演奏の一つだ。ただ感動的であることは、通常言われているところの「名演」の域を超えている。
「ハスキルのピアノは玄米のようだ」と評したピアニストがいたが、まさに言い得ていると思う。
ベルリン・フィルを指揮してのステレオ録音盤があるが、バイエルン国立管弦楽団演奏は、モノラル録音(電気的にステレオ化している盤もある)故に不思議な感触を味わうのかもしれないが、それもまた「個性」となって燦然と自己主張しているところが貴重なのだ。ハスキルのカデンツァと、3っつの楽章の勢いが連なっている点が素晴らしく。フリッチャイの指揮も含めて、微妙に異質なモーツァルトだ。
ヴィンテージ・レコードのプロダクト、クレジットとノート


演奏者
クララ・ハスキル
オーケストラ
- ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
- バイエルン国立管弦楽団
指揮者
フェレンツ・フリッチャイ
作曲家
ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト
曲目
- ピアノ協奏曲19番「第2戴冠式」ヘ長調 KV459
- ピアノ協奏曲27番変ロ長調 KV595
録音年月
- 1955年9月(19番)
- 1957年5月(27番)
録音レーベル
HELIODOR
レコード番号
SMH-1060
録音種別
STEREO
レーベル世代
日本グラモフォン社製
製盤年
1957
レコード盤枚数
1枚組
レコード盤重量
160㌘
製盤国
JP(日本)盤
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